『刈り取る』会社に収穫はない?

「午前のアポ、契約取れました。午後の2件も刈り取れると思います。そのあとは直帰で……」

“どっかで聞いたような……。
近くから、聞き覚えのある声が聞こえました……。

“あ、さっきの営業だ! どっかじゃない、さっきだ!”

僕はオフィスのあるビルの地下で1人、ランチをしてました。
11時からの来客が、結局12時半ぐらいまでかかってしまい、デスクに戻ると周りには誰もいませんでした。
“まいっか……。一人で行くか……。

すでに1回転した後なのか、ちょこちょこ空席の目立つプロント。
ランチセットをながらスマホをしながら食べていました……。
ちょうど背を向けあっていたので相手も気づかなかったのでしょう。

午前の来客は、来年度の求人媒体についての打ち合わせでした。
新卒採用を行う企業は、××ナビ(それ以外の名称もありますが)と呼ばれる人材サービスを使うことが慣例になっています。
慣例というか、使いのが当たり前、という感覚がありますよね。

今でこそ、お付き合い先のベンチャー企業には“ナビサイトを使わない採用活動”を提案していますが、僕がサラリーマン時代、企業の採用担当だった頃は、使うのが当たり前。
どれを使うか、どれとどれを使うか、という感じでした。

昨年も、一昨年も同じような打ち合わせだったと思うのですが、それでも効果を上げるために僕からもいろいろと質問や提案をなげかけつつも、圧倒的に先方が優位であることは変わりません。
使うことを前提に話が進んでいるわけですから。
稟議もあげてしまっているので、最後は契約書に押印して終わりました。

“刈り取りねぇ……。刈り取られたってわけだ……”

僕はその刈り取りって言葉が妙に引っ掛かりまして。
営業担当者は3~4年前からウチの担当なので、非常に良くしてくれてるんですが……。
きっと無意識に発した言葉なんだと思います。
でも。でもですよ。
“刈り取る”って言葉が口から出るってことは、そういう意識で僕らを見ているわけで……。
本人は、まさかついさっきまで営業してた客が近くにいるなんてことを微塵も思ってないでしょう。
もし仮に僕が声をかけても、感じのいい営業スマイルで振り向くことでしょう。
だって“刈り取った”発言を、自分でもまったく認識していないでしょうから。

でもね、でもモヤっとするわけですよ。
刈り取られた本人からすると。
そういう意識で(無意識なんでしょうけど)営業してるわけですから。
会社に帰っても、みんなそういう意識なんでしょう(無意識なんでしょうけど)ね。

こういうのって、会社のスタンスだと思うんです。
こういうのって、会社のスタンスが問われていると思うんです。

そういう意識(無意識なんでしょうけど)、ありますよね。
かくいう僕もサラリーマン時代、周りがそんな意識だったことを覚えています。
お客様にお越しいただいて毎月勉強会をするのが一般的だったんですが、その勉強家を“いけす”
っていう仲間がいたのを覚えています。
個人的には、その“いけす”っていう表現にモヤっとしてましたが、誰ひとり指摘する人はいませんでした。
誰ひとり指摘しないってことは、結局は会社がそれでいいと思ってるわけです。
誰ひとり指摘しないってことは、結局は会社がそういうスタンスなわけです。

お客さんの中にも、全然気にしない方もいるとは思うんですが。
お客さんの中には、結構気にする方もいたりすると思うんですが。

僕は独立して以来、件の人材サービス会社を紹介したことはありません。
どうしても使うっていうなら仕方ないですが、積極的におススメすることもありません。

だって“刈り取られてる”んですよ。
だって“刈り取る意識”でいるんですよ。
無意識かもしれなけど、そういう人とは長くは付き合えないですね。
意識してたんだとしたら、そういう人とは付き合いたくないですね。

お客様は神様ではないですが、パートナーではあると思っていますので。

ちょっとした言葉で、無意識に使っている言葉で、お客さんを遠ざけしまうことってありませんか?

どうしても気になっちゃうんですよね……。

気にならなければ全然構わないと思います。
“どうでもよくない?”というのであれば、全然構わないと思います。

でも、これってスタンスが問われていると思うんですよ……。

お客様はパートナーだし、お互いに気持ちよく付き合いたいと思うタイプなものですから……。
売上につながるか否か(損得で考えるか)ではなく、お互いにリスペクトできるか(尊徳で考える)で付き合いたいと思うタイプなものですから……。

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