「社長、うちの会社もそろそろ評価制度作った方がいいんじゃないですか?」
「××(社長の名前)さん、ウチの会社、組織がおかしくなってきてますよ」
「△△さん、こういうのってマニュアルになってないんですか?」
創業から今まで、とにかく走り続けてきた。
一緒に走り続けてくれる仲間も増えた。
役割を任せられる頼もしいメンバーもいる。
と、言いながら、メンバーのひと言で“そうかな”と気づかされることもある。
いつも、いつでも。
トップの悩みは尽きません。
そのひとつが、組織に関する悩みだと思います。
僕の経験で言えば、社員数が20名ぐらい。
このくらいの数になってくると、このくらいの数を超えてくると、トップの、『組織』について考える時間が増えてくるようです。
「社長、うちの会社もそろそろ評価制度作った方がいいんじゃないですか?」
売上も部下育成も、だいぶ頼もしくなってきた中堅メンバーにこう言われたら、“そうかもなぁ”と思いますよね。
「××(社長の名前)さん、ウチの会社、組織がおかしくなってきてますよ」
創業して間もない頃に応募してきてくれ、今では幹部より仲間に頼りにされている古参メンバーからこう言われたら、“そうなの!”と思いますよね。
「△△さん、こういうのってマニュアルになってないんですか?」
前職から転職してきて3年。一人前どころかチームリーダーとして会社に貢献してくれてるメンバーからこう言われました。
はい。僕の話です。
「平間さん、こういうのってマニュアルになってないんですか?」
「はい、なってないですね」
「どうしてなってないんですか?」
「どうしてなってないと思います?」
「質問に質問で返さないでくださいよ(怒)」
「あ、ごめんなさい……。いや、その、必要ないかなと思って……」
「え~、そんなことないです。必要ですよ」
「必要ですか?」
「はい、あった方が絶対いいです」
「う~ん。そうですかぁ……。っていうか、あると何かいいことあります?」
「ありますよ」
「例えばどんな?」
「仕事が効率化するじゃないですか」
「ほう、効率化とな……」
僕は以前、とあるコンサルティングの会社に勤めていました。
社員数は20人どころではなく、数百人の会社でした。
そこで、人事・採用の仕事をしていました。新卒も、中途も。
仲間たちとは会社に入る前からの付き合いですから、会社に入ってからも当然、距離感が近いわけです。
相談もあれば、愚痴もあります。
会社の上司よりも、僕の方が話しやすいこともあるようでして。
「平間さん、こういうのってマニュアルになってないんですか?」
人事・採用の仕事をする前はコンサルティングの仕事をしていたこともあり、社員の相談に対して、“こういうコツがあるよ”と答えることが多々ありました。
『コツ』と言っても僕が編み出したものではなく、先輩コンサルタントや創業メンバーで編み出したものの受け売りなのですが、その『コツ』を伝えると、多くの仲間が膝を打ってくれます。
「ありがとうございます」とニコニコしてその場を去る仲間もいれば、「こういうのってマニュアルに……」と聞いてくる仲間もたまにおりまして。
「ほう、効率化とな。ホントですか?」
「ホントです。そうですよ」
「何がどう効率化するんですか?」
「何が、どうって……」
「マニュアルがあれば、チームメンバー(部下)に“これ読んどいて”って言えますもんね」
「そ、そうです。メンバーにとってもプラスになるじゃないですか」
「っていうか、Aさん(当人)がラクできますもんね」
「平間さん、“ラク”ってなんスか」
「違います? マニュアルがあったらラクかもな、そういう温度感なのでは?」
「う~ん、まぁ、それもありますけど」
「それも? それが、じゃなくて?」
「いや~、平間さんキライっすわ~。いっつも痛いとこ突くし~」
「いやまぁそう言わずに。僕が言いたいのは、“易きに流れてませんか?”ってことですから」
「いや、だからそれです、それ。確かにマニュアルがあったらラクだな、と思ってました。易きに流れてました。入社前から、そして入社しても、平間さんにさんざん言われましたから。“易きに流れたらダメよ”って。意識してます。ホントそうです。今回、つい出ちゃいましたね。スイマセン。ホントスイマセンでした」
「いやいや、謝らないでくださいよ。僕も出ます、出るときありますから。“出てますよ”って、言われないと気付かないこともありますから……」
コンサルティングの仕事にマニュアルはないと思っていまして。
僕が思うコンサルティングの定義は『問題(課題)解決』。
問題はマニュアルでは解決しないので。
ただ、コツがあればよりよく、より早く解決方法を考えることはできると思います。
そんな話を、続けてAさんにはお伝えしました。
「社長、うちの会社もそろそろ評価制度作った方がいいんじゃないですか?」
「××(社長の名前)さん、ウチの会社、組織がおかしくなってきてますよ」
僕の会社はまだ全然小さな会社なので、こんなことは言われたことがないですが、もし僕が言われたら、こんな感じになると思います。
「社長、うちの会社もそろそろ評価制度作った方がいいんじゃないですか?」
「そう?」
「そうですよ。作った方がいいですよ」
「なんで?」
「“なんで”って、みんな“自分は何をどうしたら評価されるんだろ?”って思ってますよ?」
「みんな? 例えば? 誰と誰と誰?」
「え~と、××とか、△△とか、〇〇とか……」
「そう。じゃ、××と△△と〇〇呼んできて。聞いてみるから」
「え、あ、いいです、そうじゃなくて」
「そうじゃなくて?」
「っていうか、評価制度の話です」
「そう。評価制度の話。っていうか、みんなじゃなくて、君が欲しいんでしょ?」
「あ、はい、そうです……」
「評価制度、あった方がいい?」
「はい、そう思います」
「どうして?」
「どうしてって、仕事にやる気が出ると思います」
「じゃ、今は仕事にやる気がないの?」
「いや、そういうわけでは……」
「じゃ、いいじゃないの」
「いや、でもやっぱり評価制度はあったほうがいいと思います」
「粘るね~。“自分は評価されてない”と……」
「いや、評価されてないとは、そこまで思ってませんけど……」
「でも、あった方がいい」
「はい、あった方がいいと思います……」
「う~ん、そうか。っていうか、何を評価されたいの?」
「何を評価されたい?」
「実績を評価されたいとか、がんばりを評価されたいとか、そういうの」
「あ、いや、確かに実績もがんばりも評価されたいとは思います」
「“されたいとは”か……。明確に“これを評価してください”ってのはないのかな?」
「そうですね、明確には……」
「でも評価項目が欲しい、と」
「ニンジンが欲しいの?」
「ニンジン?」
「これがんばったから、これだけあげますよ、的な」
「ま、ないよりはあった方が……」
「そっか……。今、仕事忙しいのかな?」
「ま、いつもどおりの感じです」
「そっか……。もしかして疲れてる?」
「疲れてる? そう見えますか?」
「なんか、そうかもな、って」
「そうですかね……」
「う~ん、っていうか、ストレートに言っちゃうとね。なんとなく“易きに流れてないかな”、と。“仕事忙しいな、ちょっとラクしたいな。評価制度があったら、それに従って仕事すればいいのかな。今みたいであれもこれもやらなくていいのかな”って感じなのかな、と」
「あ、いや……」
「え、なに?」
「図星です。ちょっとラクできないかって思ってます、今」
「そっか~。そうなんだね~。そうだよね~」
まぁ、本当にこんな感じの会話になるかどうかはなんともいえませんが……。
僕ならこんな感じで話すと思います。
仲間から「評価制度つくってよ」と言われたら、“そうかもなぁ”と思いますよね。
でも、仲間からの「評価制度つくってよ」は、真に受けないほうがいいと思います。
評価制度を作って欲しいんじゃなくて、何かのアラートかもしれません。
言葉にならないモヤモヤなのかもしれません。
そこを汲んであげてください、ということでしょうか。
社員に“作ってよ”と言われて評価制度作りました。
でもなんか、うまくいってない気がします。
そんな会社は少なくないかもしれません。
トップが“作りたい”と思って評価制度を作るのは賛成です。
ただ、評価制度がなくともキャリアパスがあれば仲間は頑張ってくれるものです。
“成長したい”と思って入社してくれた仲間ならば、ですが。
採用活動で「ウチにはこんな評価制度があります」とお伝えする会社があります。
僕がご支援している企業には、“あまり言わないほうが良いですよ”とお伝えしています。
だって、どんなに優秀な人でも“この評価制度があるから”と言って入社してきてくれたら、評価制度のためにがんばる仲間になるかもしれません。
ま、この辺のお話はカテゴリーが違うので、また今度。
いつか『仲間の集め方』のカテゴリーでお伝えしようと思います。