「労務の仕事もひととおり出来るようになったので、採用の仕事もしたいんです」
「管理会計だけじゃなく、会計や財務全体の業務をやっていきたいんです」
「このままプレーヤーとしてがんばって一流の営業になりたいんです」
部下やメンバーから、突然カミングアウトされることがあります。
会社によっては、評価のフィードバック面談の際に打ち明けられるかもしれません。
会社としては、“彼にはこんなキャリアを歩んでほしい”というビジョンがあるかもしれません。
上司としては、“彼女にはこんなステップアップをしてほしい”という想いがあるかもしれません。
“困ったな……”
そう思う人もいるかもしれません。
“そうか! よく言ってくれた!”
そう思う人もいるかもしれません。
『働き方改革』という風が吹き荒れています。
在宅勤務とか、週休3日とか、残業しないさせないとか。
会社は社員にどのような環境を提供すればいいのか悩みに悩んでいるようです。
でも、仲間が望んでいるのは新たな環境なのでしょうか?
お付き合い先では、社員の方との面談を依頼されることがしばしばあります。
「今の業務では自分なりには会社に貢献しているつもりなので、新しいことをしたいんです」
「会社からは“リーダーになれ”って言われてるんですが、気が重いんですよね……」
「実はやりたい仕事があるんですけど、ウチの会社、希望とか聞いてくれるんでしょうか……」
あくまでも僕の感覚ですが、仕事の環境よりも、仕事の内容に関する相談が多いように思います。
会社は好きだけど、仕事にちょっとモヤモヤしてる。
仲間は好きだけど、仕事にちょっとモヤモヤしてる。
居心地は良いんだけど、なんだかちょっとモヤモヤしているように思います。
相談を聞いていると、僕の方が勉強になります。
僕の方が、気づかされることの方が多いんです。
“あぁ、そういう風に考えてるんだなぁ”って。
僕は昭和の人間です。
別に自慢してるわけでも卑下してるわけでもありません。
両親は団塊の世代です。
いわゆる、高度成長期。
“一億総中流”とか言われる時代。
“とにかく豊かになろう”とみんなで頑張った時代。
この時代って、価値観が分かりやすかった時代だと思うんです。
会社や仕事の中でも、価値観が分かりやすかった時代だと思います。
“がんばってたくさん稼ごう”
“出世して偉くなろう”
僕が社会人になった頃。
すでにバブルは崩壊してました。
倒産するわけがないと言われた銀行や大企業が倒産していた時代。
それでも“稼ごう”“偉くなろう”という名残はあったと思います。
何が勉強になるかって、何が気づかされるかっていうと、わかりやすかった時代の価値観とは違ったモノの見方、考え方が得られるからなんです。
僕は今、大学でも講座を持っていまして、大学生と話す機会も多いんです。
就活真っ最中の学年だけでなく、1年生や2年生など、ハタチ前後の若い子とも。
「お金は欲しいですよ。でも仕事人間って何か違うかな~」
「偉くなるってよくわかんないです。楽しかったらよくないですか」
“ま、僕もそう思うけどね”
そう思いながらニコニコ聞いています。
今回、みなさんと一緒に考えたいのは、“キャリアパスってどう思いますか?”ということなんです。
キャリアプランという言葉でもいいかもしれません。
多くの企業では、人事制度をお持ちだと思います。
多くの企業では、評価制度をお持ちだと思います。
昇進によって役職が上がる人もいます。
昇給によって給与が増える人もいます。
役職が上がれば、給与が増えれば嬉しいですが、“ただ……”という人が増えているかもしれません。
そもそも上がりたくないのに役職が上がってしまって、“でも……”という人もいるかもしれません。
会社としては、“彼にはこんなキャリアを歩んでほしい”というビジョンがあっても……。
彼はそれを望んでいないかもしれません。
上司としては、“彼女にはこんなステップアップをしてほしい”という想いがあっても……。
彼女はそれを望んでいないかもしれません。
昭和の価値観は、わかりやすかった時代の価値観は、みんなが“それがいいよね”と言ってたと思います。
でも、令和になった現在、価値観の多様化が進んでいるように思います。
昭和の価値観は、分かりやすかった時代の価値観は、みんなが“稼いで偉くなろう”と思っていたと思います。
でも。令和になった現在、考え方の多様化が進んでいるように思います。
“新卒で経理に配属し、慣れない仕事に慣れてもらい、できるようになったらさらなる効率化を進めてもらい、会社に貢献する”
そう会社が思っていたとしても、当の本人としてはこう思っているかもしれません。
“新卒で経理に配属され、慣れない仕事にも慣れ、できるようになった。だから今度は管理会計や決算、いやそれも出来るようになって資金繰りや調達など財務の仕事もしてみたい”
“営業部門では、まずは個人の成果を出し、次にチームをまとめてチームの成果を出し、さらには本部をまとめあげて成果を出してほしい”
そう会社が思っていたとしても、当の本人はこう思っているかもしれません。
“営業部門に配属になった。個人の成果も誰より上げている。やっぱりお客様の役に立つのはやりがいがあるものだ。だから、もっともっと多くのお客様の役に立ちたい”
実は以前、この話をとある企業の人事の人に話したことがありました。
誰もが知る、大手企業の人事の役職者の方。
「そんな、個人個人の希望を聞いていたら、組織の統制が取れなくなっちゃうよ」
おっしゃるとおりです。
僕も、そう思います。
ただ、考え方は様々あるとは思いますが、“統制を取る”という考え方が“昭和っぽいかもな”とも思うんですよね。
“こういうキャリアを歩んでほしい”
それって会社の都合、人事の都合でしかないかもしれません。
一緒に働く仲間の中には、“キャリアを広げたい”と思っている人もいるかもしれないし、“キャリアを深めたい”と思っている人もいるかもしれないし、“キャリアを極めたい”と思っている人もいるかもしれません。
それに応えてあげられたら、仲間たちはもっともっと頑張ってくれるんじゃないかな。
僕はそう思っています。
考え方はさまざまだと思いますが。