「世の中には、人材、並、それ以外の3種類の人間がいる」
僕が社会人になって最初に社会のイロハを教えてくれた人。
その人が僕たち新入社員にこんなことを言っていました。
“それ以外かぁ……。確かに、世の中には酷い犯罪を起こす人もいるしなぁ……”
僕は当時、その人を尊敬していたので、素直に受け入れた記憶があります。
もう25年以上も前の話です。
ここでは敢えて“それ以外”と書いていますが、当時は“××”とおっしゃっていました。
敢えて“××”と濁しているのは、そのまま書いちゃうと、確実に炎上するから。
もちろん恩師は、“それ以外”について言いたかったのではありません。
僕たちの新入社員研修での恩師の話は、『人材になるには』というテーマでした。
人材になるには、
・使命感を持って、日々ワクワク、イキイキして働くこと
・長所を伸ばし、人のため世の中の生成発展のために尽くすこと
が大事だよ、と教えてくれました。
わかったような、わからないような、そんな感じでした。
「使命感って何ですか?」
みんなが思ってたけど敢えて口にしなかった(質問できなかった)ことを聞いた同期がいました。
「役割のことだね」
わかったような、わからないような、そんな感じでした。
「人は役割を持って生まれてくる。でもその役割は自分ではわからない。だから目の前のことに一心不乱に取り組む。そうすると役割は見つかる。役割が見つかった人はラッキーだな」
ますますわからなくなりました。
「役割が見つかった人は、その役割を全うすること。役割を全うすることは世のため人のためになる。そして自分に返ってくる。使命感とは、みつけた自分の役割を、全うすることだよ」
やっぱりわかったような、わからないような……。
先に質問してくれた同期は食い下がりました。
みんなの、“わかんねぇよ。オマエ聞けよ”の空気を汲んでくれたのかもしれませんが……。
「目の前のことに一生懸命になったら、役割は本当に見つかりますか?」
「見つからない奴もいる」
恩師は即答。
「えっ?」
質問した動機は、納得できないような、そして驚いたような、変な声をだしていました。
実は僕も、いや僕も含めて同期みんな、そんなリアクションだったように思います。
「でも、3つの条件を覚えておくと、見つかりやすくなるよ」
恩師は、同期が“その3つはなんですか?”と聞くのを見透かしたように、続けました。
「1つは勉強好き、2つ目は素直、そして3つ目はプラス発想だな」
結論しか言わない(と聞かされていた)恩師にしては珍しく、その後も饒舌でした。
「“勉強好き”というのは、知らないことを知ろうとすること。自分、いやそもそも人には知らないことがたくさんある。“別に知らないままでいいよ”と思う人もたくさんいるだろう。でも“これって何だろう?”とか“どうしてこうなっているんだろう?”と知りたい気持ちが大事だな。知りたい気持ちがあれば、調べるし、知ってる人に聞くだろう。そうして人は少しずつ知識が増えていく。
学校で学ぶことだけが勉強じゃない。世の中には学べること、学ぶべきことがたくさんある」
「“すなお”というのは否定しないことだな。知らないことを知ろうとして調べる、人に聞く。でも、理解できないこともある。自分が未熟だったり、理解できるだけの知識が足りないことが原因だ。人は、往々にして自分の理解できないことを否定してしまう生き物だ。“そんなはずない”とか“そんなのおかしいよ”とな。これは“素直”じゃない。“よくわからないけど、そういうこともあるんだろうな”。“理解できないけど、そういうもんなんだろうな”。そうやって、まずは受け止めることが大事だ。受け入れなくていい。わかりもしないのに受け入れるのは妄信だ」
「でも、知らないことを知ろうとして理解できないことがたくさんあると、人は落ち込むもんだよ。自分ってバカじゃないのか、とな。フツーは落ち込む。マイナスな感情ばかりが出てくるものだ。だが、そこで落ち込んではダメだ。知らないことが多すぎる自分を肯定しないと。今、バカじゃないかと思っている自分を肯定しないと。これからわかることが増えるからいいじゃないかとプラスに考えないと。学べば学ぶほど落ち込みがちだけど、そこはプラスに考えないといかんな」
恩師は、話し過ぎたと思ったのか、最後にこう言いました。
「勉強好き、素直、プラス発想で目の前のことに取り組む事だよ」
質問した動機は大きくうなずいていましたが、僕はまだモヤモヤしていて……。
「でもまぁひとまず、“そういうもんだろうな”と思うことにしよう」
“素直”を実践してみることにしました。
あれから25年以上が過ぎ、自分が“人材”になったかどうかはわかりません。
ただ、役割は見つかったような気がします。
今は、役割をまっとうしよう、役割を果たそうと悪戦苦闘している日々です……。
追伸1:
今回は独り言のような、単なる雑記になってしまった気がします。
僕が言いたかったことは、新入社員って、自分が未熟であることを認識している人ほど“早くスキルを身に着けたい”って思いがちですが、実は“正しい考え方を理解する”ことの方が何倍も大事なんだよってことなんです。
だから、これを読んでいるトップの方には、新入社員と接する機会にぜひ“正しい考え方”を伝えてあげて欲しいって思っています。というかお願いです。
追伸2:
歳を重ねるとだんだんわかってくることですが、“何を学ぶか”ってことよりも“誰と出会うか”の方が何倍も大事なことですよね。
僕も新入社員の時にこの話を聞いたときは“わかったような、わかんないような……”と思ってましたが、歳を重ねて思うことは、こういう大事なことを言ってくれる人と出会えたことは物凄い財産だったんだな、ということです。
“正しい考え方”を教えてくれる人生の先輩に出会えたことは、ずっとずっと後になってから“出会えてよかった”と思ってくれると思います。
これを読んでいただいているトップの方にお願いしたいのは、“新入社員には難しいかもしれないな”と思うことでも、“正しい考え方には早いも遅いもないだろう”と、いろんなことを伝えてあげていただきたい、ということなんですね。
“人材育成”の肝は、“正しい考え方”をどれだけ伝えられるかに、かかっていると思います。