「就活で良かった会社ある? 説明会とか、面接でもなんでもいいけど……」
「え~。どうでしょう? なかなか思い浮かばないですね~」
就活を終えた学生たちと、内定祝を兼ねて食事会をすることがあります。
こう質問すると、なかなか返事が返ってきません。
「じゃ、社長は? 良かった社長、カッコよかった社長っていた?」
「あ、います、います!」
返事が早いのは女子。女子はよく見てます。
「男子は? どう?」
「う~ん。いないこともないですかね……」
リアクションが薄いのは男子。
でも、突っ込んで聞いていけば出てくるのも男子。
「じゃ、教えてよ。どんどん教えて」
後は放っておいても盛り上がってくれます。
僕はハイボールを飲みながら、彼らの話を聞いているだけ。
スマホをいじっているふりをしながら、メモアプリに打ち込んでいきます。
そんな感じで、もう10年以上大学生と関わっています。
大学生からのリアルな声を聴けるのは貴重な経験です。
前段が長くなりました。
学生がどんな社長、経営者をカッコいいと言っているか。
厳密なデータや統計を取っているわけではありませんが、多いのはこんなコメント。
・背が高くてカッコいい
・声が低くてカッコいい
・イケメンでカッコいい
こういう声が出てくるのは圧倒的に女子なので、聞き流しています。
こういう声が多いのはお酒の席だからか、僕がなめられているのか。
でもまぁこういうトコロに本音が見え隠れするので恐ろしい……。
でも、こういう本音が出てくる場だからこそ、新たな気づきがあります。
「××の社長、スーツがカッコよかったんです~」
「あ、わかる~。イケてないサラリーマン多いから、逆に目立つよね~」
「そうそう、男子のリクルートスーツが見慣れてるから余計にね」
女子の本音トークは止まりませんが、この話題に限っては、男子もノッてくる。
「あ、そういわれれば、そうっスね。スーツの社長、カッコいいっす」
「スーツの社長じゃねぇだろ。カッコいいスーツ着てる社長だろ?」
「ん? まぁ、要はスーツ姿。スーツ姿がカッコいい社長っていない?」
“見てるとことは見てるんだなぁ~”と思いながら感心して聞いています。
「でもさぁ。ベンチャーの経営者ってスーツ着てない人多くない? ラフなのはダメ?」
「いや、ベンチャーもいいっすよ。ベンチャーの経営者もカッコいい人多いっすけど……」
「けど?」
「ああいう格好は学生の自分らでもできるかな、って。親しみやすくはありますけど」
「ああいう格好? Tシャツ姿ってこと?」
「ええ、まぁ」
「そっか、みんなもフツーに着てるもんね。女子は? どうなの? ベンチャー経営者」
「ベンチャー経営者もカッコいい人いましたよ」
「スーツじゃない人、多くない?」
「別にいいんじゃないですか? スーツじゃなくても。清潔感があれば」
「清潔感かぁ……。難しいこと言うね。Tシャツはダメ?」
「ダメじゃないですけど、“なしより”かなぁ」
「“なしより”。そっか……」
「あるベンチャーの説明会、社長が話してたんですけど、Tシャツだったんですよね」
「Tシャツ? Tシャツはダメじゃないんしょ?」
「っていうか、Tシャツにギラギラした腕時計してて、“あ、これダメ”って思ったんです」
「ギラギラした時計……」
「いかにも高そうな時計って感じの。せめてアップルウォッチにしてよね、って感じ」
「スマートウォッチがいいの?」
「バランス悪くないですか、Tシャツにギラギラって。Tシャツならスマートウォッチぐらいがバランス取れていいじゃないですか」
「へぇ~、そういうもんか」
さすが女子は見てるところが違います。参考になります。
「ってことは、スーツにギラギラもダメ?」
「なんか、“金持ってます”の自己主張、強くないですか?」
「そうそう、成金趣味って感じ~」
“成金趣味なんて言葉知ってるんだ”と思いながらも、女子の意見は辛辣です。
「なんか、自分が働く会社の社長はカッコいい方がいいっす」
負けじと男子も参戦。
「それは、イケメンとは違うんだよね」
「イケメンはいいっす。なんかイケメンだといやっす」
「それは嫉妬?」
「嫉妬じゃないけど、なんかイラつくんすよね」
「それを嫉妬というんだよ」
「っていうか、カッコ悪い社長よりカッコいい社長の方がいいじゃないすか」
「ま、そりゃそうだけど」
Tシャツは“なしより”、ギラギラはダメ。
やっぱりカッコいい方がいい。
学生のこういう感覚は、10年前も今も変わらない気がします。
・体型にジャストフィットしたスーツを着ていた
・普段から手入れがされている(磨かれてツヤのある)革靴を履いていた
・スーツの胸ポケットから高そうなボールペンを取り出してメモをしていた
こういうのを“カッコいい”って思ってる学生は少なくないですね。
・“カラダ鍛えてそう”って感じの人ならTシャツでもポロシャツでも
・カラーコーディネートのバランスが良ければカジュアルな格好でも
・身に着けるものの調和がとれていればラフな格好でもスーツでも
こういうのも“カッコいい”って思ってる学生は少なくないですね。
「こんな社長の下で働きたい」
「こんな社長の様になりたい」
こう思って入社してくれる仲間の存在は貴重です。
こう思って働いてくれる仲間の存在は貴重です。
組織にとって社長は、特別な存在です。
社長という威厳や社長という立場で、組織をまとめることもできるでしょう。
でも、仲間が社長をリスペクトしている組織は、それだけでまとまりのある組織だと思います。
若者の審美眼はあなどれません。
そんな若者の期待に応えるのも、トップの役割かもしれませんね。
いろいろな考え方もあると思いますが、こんな考え方もあるかもな、と思っていただければ。