「私は××さん(上司)のようにはなれません。もう限界です……」
“また来たかぁ……。もう止められないよなぁ……。
「そっかぁ……。辛かったね……。力になれなくてゴメンね……」
「いえ、とんでもないです……。平間さんのせいじゃありません……」
“でも、アソコに配属させたこと、怒ってるだろうなぁ……”
サラリーマン時代、こういう会話を何度したかわかりません。
僕が採用の仕事をしていて一番辛いことのひとつが、若手社員が志半ばで辞めてしまうこと。
採用や入社して間もない頃は接点も多くありますが、配属されてしまうとなかなか目をかけてあげることができません。
本人はずっと前から悩んでいたのでしょうが、僕のところに来る時点もう気持ちは決まっています。
「いよいよ私のところに来たってことは、“報告”ってことだよね……」
「はい、人事の方には内々で伝えています」
「そっかぁ……。今まで本当にありがとね……」
「いえ、こちらこそです。採用の時からお世話になりました……」
ホント、辛いです。
僕のところに来る若手は、ほとんどが相談ではなく報告に来ます。
“期待されて入社したんだから、がんばらなきゃ!”
そういう思いで、前のめりで頑張る若手が少なくありません。
いつでも相談できるような空気感を漂わせているつもりでも、限界ギリギリになって報告に来る。
それがホント、辛いです。
このコラムを読んでいるトップの方も同じような経験をされた方が少なくないと思います。
辞める辞めないをトップに相談に来る社員はほとんどいないでしょう。
辞めないと決めてからトップに報告に来る社員がほとんどだと思います。
社員の退職報告があると、ホント、悩みます。
若手社員の定着は会社の成長の肝ですが、リーダーの成長も会社の成長の肝。
“アイツをリーダーにしてよかったんかな?”
考えることもしばしば。
同じリーダーのもとから何人も退職者が出てしまうこともあります。
“アイツに部下をつけていいんかな?
悩むこともしばしば。
考えても答えがなかなか出ませんし、悩んでも解決策はなかなか出てきません。
多くの会社がそうだと思いますが、プレーヤーとして実績を上げている社員をリーダーに昇格させることはよくある話です。
しかし、多くの会社もそうだと思いますが、プレーヤーとして実績を上げている社員がリーダーとして活躍できてないということもよくある話です。
『名選手、名監督にあらず』
そんな、諺のような名言もありますが、そもそも誰をリーダーに据えればいいのか。
実は僕も答えを持ってはいません。
ただ、“こういうタイプは要注意”というモノサシ、はあります。
それが、“部下と勝負をする上司”。
社内でこんなシーンはありませんか?
営業会社であればよくあるシーンです。
若手社員が、お客様からご契約をいただいてオフィスに戻ってきました。
フロアの扉を開け、勢いよく入ってきます。
「ただいま戻りました! ××さま(お客様の名前)から受注、いただきましたー!」
「おぉー! よかったねー!」
「頑張ったな! 長かったな!」
「おめでとう! お祝いしなくちゃね!」
仲間たちが若手の受注を祝福しています。
そんな盛り上がりに対して、上司である社員がどういうリアクションを取るか。
A:「なんだよ、俺ならもっと高いの取れるけどな」
B:「お~よかったなぁ~。ホントよかった」
プレーヤーとして実績を上げている、そしてその営業力に自信と自負を持っている社員ほど、Aのようなリアクションを取ることが多かったりします?
スキルも経験もまだまだ成長途中の若手社員と、スキルも経験も十分に持っている自分を比べてしまう。それだけでなく“自分の方がもっと出来るよ”と口に出してしまう。
こういうタイプが上司では、若手社員もさぞ辛いでしょう。
上司に必要な立ち居振る舞いは、若手を包み込んであげること。若手のレベル、目線に降りてあげること。これが基本だと思います。
レベル、目線を下げてあげられない上司は、無意識に“ここまで来い”という空気を醸し出します。
叱咤激励しているつもりなのかもしれませんが、若手社員にとってはあまりにも遠いレベルを期待されても辛いだけでしょう。
人の成長は一歩ずつ。一足飛びにはいきません。
最近は多くの、そして効果あるリーダーシップ研修もありますから、昇格と共に研修を受けさせるという手もあるでしょう。
しかし、多くの企業では、プレーヤーとして実績を上げていることを認めて昇格させています。
昇格となった社員も、これまでの自分が認められての昇格ですから、“リーダーシップはまだまだだから研修を受けなさい”と伝えても、なかなか身に入らないでしょう。
どういうタイプを上司にするか。考えたいところです。