「“今年もいい子が入ったね”って、現場の評判もいい感じですよ」
「へぇ~そうですか。ホント、よかった、よかった」
4月も半ばを過ぎました。(このコラムの日付は4月19日)
大手はまだまだ研修期間かもしれませんが、中小ベンチャーさんだと研修も終わり、部署配属が済んでいる頃かと思います。
配属先の先輩社員から、「今年の新人は……」という声が聞こえてくる頃かと思います。
「スーツが着慣れてない感じが初々しい」
「新人さんの方から挨拶してくれるのは気持ちいいね」
「“××さん、よろしくお願いします!”って名前で呼ばれたからビックリしちゃったよ(嬉)」
いろいろな声が届いていると思います。
「いや~、覚えが早い。とにかく覚えが早いのはいいねぇ」
「へぇ~そうですか。覚えが早いですか」
「うん、そう。やっぱり××大学卒は覚えが早いよ」
「いやいや、大学名は関係ないんじゃないですか」
「関係あるよ。ちゃんと勉強してきたんだから」
「ま、そりゃそうかもしれないですけど、ね」
「なにその“かもしれないですけど、ね”って」
「あ、いや、スイマセン……。ちなみに、“覚えがいいねぇ”って本人に言っちゃいました? 誉めてあげたというか……」
「そりゃそうだよ。平間さんいつも言ってるじゃない。“長所を誉めろって”さぁ」
「あ、褒めちゃったんですね……」
「ダメなの? 誉めたら」
「あ、いや、褒めるのは良いんですけど、“覚えがいい”は褒めすぎない方がいいというか……」
「なんでよ。覚えがいいのは良いことじゃない」
「それがですね……」
僕は4月も半ばを過ぎると、お付き合い先の先輩社員に、「今年の新人さんはどうですか?」と聞くようにしています。
今年はまだありませんが、年に数回、このような会話が交わされます。
学歴主義で採用している会社ではないものの、高偏差値の大学、誰もが知るような大学から新人が採れた時に、比較的このような会話が交わされることが多いように思います。
「ダメなの? 誉めたら」
「“覚えがいいね”は言わない方がいいと思います」
「なんで?」
「“学生脳”に戻っちゃうからです」
「“学生脳”って平間さんが新人研修でいつも言ってるやつ?」
「そうです。新人研修で言ってるやつです」
「なんで“覚える”が学生脳なんですか?」
「だって、学生って、覚えるのが仕事みたいなもんじゃないですか。“ここ試験に出るから覚えとけよ”とか“ここ重要だから丸暗記”とか先生に言われません?」
「あ、言われた。でも俺、覚えらんなかったもん」
「いや、××さんと比べてもしょうがないじゃないですか。要はそこそこお勉強をしてきた学生って、覚えるのが得意だったってことでしょう?」
「え? 良いことでしょ?」
「悪くはないんですけど、良くはないですよ」
「なんで?」
「覚えるのが早いからって仕事ができるわけじゃない。確かに覚えるのは大事だけど、必要条件かもしれないけど十分条件ではないですよ」
「ん? 難しいこと言い出したね」
「だって、覚えたからって仕事ができるわけじゃないですよ。仕事って考えてやるもんですから」
「ま、そりゃそうだけど」
「仕事教えてて、“なぜこうなってるんですか?”って聞いてきます? その新人さん」
「う~ん。どうだろう。聞いてこないけど、まだ覚えることがいっぱいあるからね」
「違いますよ。覚えることがいっぱいある時期だから“なぜ?”って考えて、“こういうことかな?”と思ったら確認して、考えてもわからなければ“なぜこうなってるんですか?”って聞くのがフツーじゃないですか?」
「あ~、そういうことか。わかったよ学生脳。そういうことか」
「そうですそうです。“ここ、なんでこうなっていると思う?”って聞かないと。聞いてあげないとダメですよ」
「そっかそっか、覚えが早いから、ついそっちに目がいっちゃってたよ……」
学生時代は覚えるのが大事です。
覚えた知識、覚えた量。
テストで確認されますからね。
社会人は考えるのが大事です。
どうなっているのか? なぜそうなっているのか?
相手は、お客さんはどう感じているのか?
考えない仕事はないですよ。
考えないと成果・結果に結びつかない。
考えないと相手の役に立つこともできない。
採用基準に“思考力”や“知的好奇心”を挙げている会社は多いと思います。
(僕がよく言う“勉強好き”ともつながりますが)
それって、仕事や成果には“考える力”や“自ら知ろうとする力”が大事だということがわかっているからですよね。
僕も新入社員研修ではとにかく時間を割いて伝えます。
『学生と社会人の違い』
「学生時代は“フライングはダメ”って言われるけど、社会人は“スタート!”って言われるのを待つことなく、どんどん先に始めちゃっていいんだよ」
「学生時代は“カンニングはダメ”って言われるけど、社会人は他人から学び、真似て、どんどん取り入れちゃっていいんだよ」
「学生時代は覚えるのが仕事だけど、社会人は考えるのが仕事。5W1H(ゴーダブリュー・イチエイチ)。つねに意識する。考える」
研修で新入社員に話すと、みんなわかったような顔をします。
「考えて、考えたら、“こういうことですか?”と確認する。すぐに答えを聞かないこと」
研修で新入社員に話すと、ちょっと怪訝な表情になります。
「考えても考えても“こうかな?”が出てこなかったら、そこで初めて“教えてください”だね」
研修で新入社員に話すと……。
「すぐにできなくてもいいから、意識してみて。意識のアンテナを立てる。いいね」
“すぐにできなくともいい”と言われると、新入社員も安心するようです。
「先輩たちも、みんなを受け入れようと一生懸命。指導もするし、教えもするし、なるべく褒めようとする」
“褒めようとする”と言われると、もっと安心するようです。
「だからと言って、“覚えるの早いね~”とか褒められても、喜ばない。いいね」
ちょっとドキッとしている研修受講生が多いと、こう質問します。
「なんで? なんで喜んだらだめなの?」
時々分かった風な顔をしている子がいます。
「学生脳……、だからですよね?」
こういう子が発言してくれると助かります。会場がイッキに“あぁそうか……”という空気になる。
研修をやったからといって、すぐに社会人脳に切り替わるわけではありません。
現場に配属になっても、なかかな社会人脳に切り替わるわけではないと思います。
本人に意識させ、常にとスイッチをオンにさせておかないと。
もうすぐゴールデンウイークですね。
僕が新人の頃は、GWは毎日仕事でした。
GWが明ける頃には社会人脳にだいぶ切り替わっていたように思います。
今の時代はゆっくり休む期間ですね。
入社してから1か月。緊張の毎日だったでしょう。
カラダをゆっくり休ませるのがいいと、僕も思います。
ただ、意識は、スイッチは、常にオンにさせる工夫を。
GWの過ごし方。ぜひ新入社員に話してあげてください。