「パスアラウンドで回しておいてください」
「例の件、部長にレビューお願いしましょう」
「先週のアクションアイテム、どうですか?」
新しい案件が始まって1週間。
“これからやってく自信がない……”
僕はかなり落ち込んでいました……。
そのお付き合い先は、上場企業。
海外売上比率も高い、グローバル企業。
案件が決まったのはコロナの真っ最中。
契約手続きで本社に赴いた翌日、
仕事をしていたのは自宅でした。
そう、フルリモート。
その会社でも、ほぼ全員が在宅ワーク。
打ち合わせはTeams。
さすがに担当者に
「パスアラウンドって何ですか?」
「レビューって何ですか?」
「アクションアイテムって何ですか?」
と聞くわけにもいかず……。
(“そんなことも知らないんですか?”と言われたくなかったもので……)
これらの意味がわかったのは、
案件開始から半年後。
在宅ワークも緩和され始め、
本社に出社するようになった頃。
他にも出社されている社員の方々がいて。
フロアに飛び交う会話から類推し。
“こういうことなんだろうな”
やっぱり直接聞けない僕は、
イメージするしかありませんでした。
実はこれには後日談が……。
仲良くなった新卒社員に聞いたんです。
僕:「パスアラウンドってどういう意味?」
彼:「知りません」
僕:「え? 知らないの?」
彼:「はい」
僕:「先輩とか上司も使うでしょ?」
彼:「使ってませんよ」
僕:「使ってないの? ホントに!」
彼:「えぇ。どういう意味ですか?」
僕:「それは僕が聞いてるんだけど」
彼:「××(部署名)だけかもしれませんね……」
僕:<絶句>
パスアラウンドって用語は、
その会社の社内言語ではなかったようです。
一部の人しか使ってなかったようで……。
その担当の方には本当に良くしていただきました。
何度も呑みに行くほど仲良くなりました。
でもその会社のことは苦い思い出です……。
こうした例は、何も特別なことではありません。
実は毎年、あらゆる企業で起こっています。
タスク
アジェンダ
ドラフト
リスケ
バッファ
ドキュメント
ペンディング
キックオフ
フィックス
アサイン……
晴れて社会人になった新人には、
「??????????」
でしかありません。
これは何も、横文字だけに限りません。
朝イチ
午後イチ
きんきん
いまいま
さくっと
寝かせる
線引き
天引き
煮詰まる
焦げ付く……
社会では一般名詞でも、
ビジネスでは普通に使う言葉でも、
会社では誰もが使う言葉でも、
新社会人には意味不明。
新入社員には“???”ばかり。
“仕事してりゃ、そのうちわかるよ”
これ、いけません。
意味が分からない言葉こそ、
新入社員にとってはストレスなんです。
一般的な、よくある新入社員研修では、
「新入社員には寄り添ってあげましょう。
いつでも“わからないことがあったら聞いてね”
と言ってあげてください」
と教えていただけるそうです。
でも僕は、新人研修の参加者にはこう言います。
「新入社員に対して声をかけるときには、
“わからないことがあったら聞いてね”はダメ。
普段会話や仕事の中で出てきた言葉を拾って、
“今の××って言葉、わかった?”
と聞いてあげてください」
“わからないことがあったら”と言われても、
わからない言葉だらけ。
わからないことがわからないばかりか、
そもそも何言ってるかわからない。
新入社員受け入れの第一歩は、言葉の理解。
“この言葉は、こういう意味で使うんです”
ここから始めるくらいじゃないと。
コロナになって、新入社員研修のテキストを変えました。
変えたというより、追加した感じ。
それが、
『ビジネスボキャブラリー辞典』
ビジネス社会で使う、共通用語。
社内でよく使われる、共有言語。
自社だけで定義している、社内言語。
参加企業の協力を得て、参加企業別に配布しています。
多くの会社で、こうした用語辞典を作ってもらい、
多くの新人に、こうした言葉を理解してもらう。
もちろん仕事をしている中でかける言葉は、
「今の××って言葉、意味わかった?」
大事なことなので、最後にもう一度。
新人にとって、“何言ってるかわからない”。
これが何よりのストレスです。
言葉のストレスを解消するために、
社内用語、共有言語、共通言語を共有してください。