「新入社員研修をする余裕がないんだよね」
「新人研修は人と時間が取られるでしょ」
「研修プログラムはウチにないからさ」
入社式は、ほとんどの会社で行うことが多いですね。
大手企業でも、中小ベンチャー企業でも。
でも、新入社員研修となると、
大手企業は自社で行うことが多いですが、
中小・ベンチャーが自社で行うことは、
なかなか難しいように思います。
マナー研修も、技術研修も、
研修会社に委ねることが多いように思います。
一般的なマナーや技術も大事です。
それと同じぐらい、いやそれ以上に
“会社に馴染む、仕事に慣れる”
ことも大事なことだと思います。
会社に馴染み、仕事に慣れるためには
OJTも有効な手段ですが、
どのようにOJTをさせるか、
どのようなOJTをさせるか、
悩みは尽きません。
OJTの中身も大事ですが、
メンター制度やブラザー制度、
こういう取り組みが増えてきました。
新入社員1名に対し、1名の先輩をつける。
一緒の仕事をする先輩をつける場合があります。
実際の仕事を教える、向き合う役割。
日々の仕事でわからないことがあれば、
その場で先輩に聞くことができる。
新人が仕事に慣れるためには有効ですね。
違う仕事をしている先輩をつける場合もあります。
仕事上の悩みを聞く、寄り添う役割。
仕事の悩みは直属の先輩には言いづらく、
利害関係のない先輩に相談することができる。
新人が会社に馴染むためには有効な手段ですね。
同じ仕事、違う仕事。
向き合う役割、寄り添う役割。
仕事に慣れる、会社に馴染む。
考え方はいろいろあると思います。
ただ、大事なことは誰を選ぶか。
どの先輩を新人につけるか、です。
“どの先輩をつけるか”
これも考え方はいろいろです。
ただ、1つ言えることがあります。
“こういう先輩は選ばないで”
“こういう先輩は新人につけないで”
というもの。
それが、
『新人と勝負する先輩』
(新人にマウントを取る先輩)
です。
僕も過去に、たくさん失敗してきました。
いろいろな会社での失敗事例も見てきました。
どんな失敗だったか。
少しだけご紹介します。
■同期に後れをとった先輩の例
新卒を毎年数十人、採用していた会社がありました。
少ない時で40名強、多い時で50名弱。
高学歴の新人も、そこそこの学歴の新人も。
元気いっぱいの新人も、ちょっと内気な新人も。
これだけの数がいれば、いろいろな人がいます。
その会社は平均して3年で一人前になります。
2年で一人前になる社員もいれば、5年かかる社員も。
これだけの数がいれば、いろいろな人がいます。
これだけの数がいるので、新人が配属される部署には、ほとんど先輩がいます。
リーダーも教育、指導していきますが、普段の仕事は先輩と一緒にすることが多くなります。
配属して数か月。
新人が人事に相談があると言ってきました。
「ウチの部署の先輩がちょっと……」
新人は、先輩から日々こんなことを言われているようでした。
「君、そんなことも知らないの? 大丈夫?」
「仕事はもっと早く終わらせないとダメだよ」
「俺(先輩)はこんなミス、しないけどね」
僕も人事から話を聞いて悲しくなりました……。
その先輩がどんな社員だったかというと……。
・入社4年目の新卒社員
・まだ一人前とは言えないレベル
・同期入社は40人ぐらい
・同期の7割は一人前になっている
ここからは想像ですが、
・自分の成長が遅いことに劣等感を抱いている
(周りからも“早く一人前に”と言われている)
ようでした。
自分の部署に新人が配属されたことから、
自分よりもレベルの低い新人が来たことから、
先輩風を吹かしていたようです。
新人にマウントを取ることで、
同期への劣等感の憂さ晴らしをしていたようです。
結果、すぐに新人との距離を取らせました。
リーダーに、一緒に仕事をさせないように、と。
先輩風を吹かせていた先輩については。
会社としては何も指導しませんでした。
指摘、指導しても落ち込むだけだと。
数年後、その先輩は一人前になっていました。
先輩風を吹かせることはなくなったそうです。
自分に自信がついたのでしょうか。
新人に寄り添う、優しい先輩になっていました。
■優秀すぎる先輩の例
新卒を毎年数人、採用していた会社がありました。
少ない時で2~3名、多い時で5~6名。
同期が少ない会社は、新人がすぐに仲良くなります。
一体化し、結束の固い新人たちです。
その会社ではみんなで新人の面倒を見ていました。
それでも1年上の先輩は、より積極的です。
同期全員で、新人に目をかけているようでした。
配属して数か月。
新人が人事に相談があると言ってきました。
「とある先輩がちょっと……」
新人は、先輩から日々こんなことを言われているようでした。
「これ、わかるよね? 大丈夫だよね?」
「それ、わからない? 簡単じゃない?」
「僕はこれ、すぐに理解できたけどな……」
僕も人事から話を聞いて悲しくなりました……。
その先輩がどんな社員だったかというと……。
・入社2年目の新卒社員(新人の1年上)
・超がつくほど高偏差値の大学を卒業
・古参社員からも一目置かれる優秀さ
ここからは想像ですが、
・自分が周りより優秀だと自認している
(わからない人の気持ちがわからない)
ようでした。
積極的に新人に教えてあげようとしたけれど、
新人の時の自分よりもレベルの低い新人が来たことで、
“なんでこんなこともわからないんだろう?”
と素直な気持ちを言葉にしていたようです。
ただ、彼の思うレベルの低い新人と接したことで、
無意識に優越感を感じていたようです。
こうした事例を思い出すにつれ、
「ひとり一人を見極めることが大事だな」
「誰と誰を組ませるかが大事なんだな」
「組織はメンバーのバランスが大事だな」
と思います。
もちろん、タイミングもあるでしょう。
新人の時は何もなくても、
先輩になってからいろいろと……。
チームメンバーの時は何もなくても、
チームリーダーになってからいろいろと……。
僕は毎年、『先輩社員研修』で講師をしています。
お付き合い先にも『先輩社員研修』の実施をオススメしています。
(自社の社員が講師として登壇するご支援もしています)
過去の失敗を踏まえ、
新人は先輩をどう見ているか、
先輩の心構えはどうあるべきか。
先輩風を吹かせないように、
先輩風邪を引かないように。
あの手この手で伝えています。
それでも風を吹かせる先輩もいます。
それでも風邪を引く先輩もいます。
見守る場合も、指摘する場合も。
性格、資質はそれぞれ違います。
個別対応が大事ですね。
新入社員が入ってくると、
新人ばかりに目が行きがちです。
でも、本当に目をかけるべきは、
新入社員が入ってきてからの、
先輩たちの立ち居振る舞いです。
先輩になった仲間を、
ぜひ気にかけてあげてください。