初期面接の目的は、動機づけ

新卒採用も中途採用も売り手市場が続いています。

このコラムを書いているのは2023年の7月ですが、
2024年入社の新卒採用活動はほぼ終了の様相を呈しています。
あらゆる業界、企業では、“なんとかして人材を確保したい”と考えていますが、
説明会にも面接にも、学生がほとんど来ない状況が続いているようです。

これまでは景気などに左右され売り手市場と買い手市場を繰り返してきましたが、
18歳人口の減少とともに、売り手市場が常態化していくように思います。

そんな時代背景の中にあって、一部の企業、一部の採用現場では、いまだに“応募者へのダメ出し”が行われているようです。

「あの応募者はスキルがないね。ダメダメ」
「先の候補者はマインドが低いね。ダメだよ」

面接を担当した現場社員から、中には幹部社員からこうしたフィードバックを聞くことがあります。

“どんだけ上から目線なんだよ”

個人的にそう思いますが、なかなか変わるものではありません。
こうしたフィードバックが行われていないか、選考の現場を再点検してみてはいかがでしょうか?

また、面接で志望動機を聞くのは今の時代ナンセンスです。
特に初期面接では。

“志望動機を聞く”、という行為は、“応募者が自社にどれだけ入りたいかを確認する”ということ。
つまり、“自社に入りたい人を採用する”というスタンスということ。

無意識に志望度を確認してしまうのは必然です。
しかし、初期面接でそれを口にしてしまうのは、選考辞退を助長しかねません。

本来、初期面接ですべきことは、
“採りたい人に対して、入りたくなるような言葉を投げかけること”
です。

選考を受けている人は、入りたいと思っている人ではありません。
選考を受けている人は、ちょっと(だけ)興味がある(だけの)人です。

“ちょっとの興味”を“たくさんの興味”に変えなければなりません。
“なんとなく興味が”を“ぜひ働いてみたい”に変えなければなりません。

もちろん迎合はいけません。
あくまでも入りたくなるような言葉を投げかけることが大事です。

大学生に対しては、「大学で何を学びましたか?」と問いかけるとよいでしょう。
「大学で何を得ましたか?」という問いかけも良いかと思います。
(「大学で何を身に着けましたか?」という問いかけは不要かと思います)

学問的な学びではなく。
大学を通じた社会の中で何を学んだか。何を得たか。

今の時代、大学生の半分は借金をして大学に来ています。
“借金”というとビックリする方もいらっしゃるかもしれませんが、要は奨学金。
中には、遊ぶためではなく生活のためにアルバイトをしている学生も多いです。
その意味では、学生は消費者ではなく労働者なのかもしれません。

「大学では遊んで遊んで遊び倒した方が良い」とは昭和世代の常套句ですが、
奨学金で大学に通い、生活のためにバイトをしているような学生は、大人たちが思うより冷静で客観的に社会を見ています。社会に出る際の選択を間違えないようにと、冷静に客観的に企業を見ています。
大学で多くの大学生と接している僕ですら、ずいぶん昔とは意識が違うんだなぁとビックリさせられることもしばしばです。

社会も学生も変化しています。
これまでの様に、“たくさん受けに来た応募者から採りたい人を選ぶ”という時代ではありません。
迎合する必要はありませんが、選ばれる企業になる必要があり、選ばれるような言葉を投げかける必要がありそうです。

企業の選考スタイル、考え方を変えないといけない時代なのだと思います。

“変えないといけない”という点で、もう1つだけ付け加えておきます。

スキル、能力、マインド、意欲、スタンス、考え方。
企業にとって選考基準はさまざまかと思いますが、“有用性”を重視している企業は多いようです。
“実用性”や“有効性”といってもいいかもしれません。

“応募者のこの経験(能力)は、ウチの会社の業務で有用かどうか”

“再現性”といってもいいかもしれません。

“前職での経験実績は、ウチの会社でも再現できる(実績を出せる)かどうか”

必ずしも間違いだとは言いません。
“スキル”とは“再現性”のことを言いますので、決して間違っているものではありません。
中途採用では、“前職での経験を自社ですぐに再現できそうかどうか”が問われます。
中途採用は即戦力採用ですから。

とはいえ、これからの時代は、“汎用性”という要素も大事になってくると思っています。
応募者の経験やスキルだけでなく、性格や資質といった要素が、自社でどう活きてくるか。
業務や分野が違っても幅広く適合、適用できるか。

人材の持つ能力や資質を、再現性だけでなく汎用性を見ている会社は、すでにあります。
というより、再現性だけでなく汎用性を見ている会社は、人材開発に長けています。
組織も事業も、上手に運営している会社が多いように思います。
(まだまだ、本当に少ないように思いますが)

人が有する“要素”の汎用性を見出し、活用する。

新卒採用であれ、中途作用であれ。
応募者の中から採りたい人が現れたら、入りたくなるような言葉を投げかける。

いろいろな考え方があります。いろいろな考え方があって然るべきです。
“こんな考え方もあるんだな”
そう思っていただければ幸いです。

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