リファラルで集め、リファラルで見抜く

採用手法のひとつに、“リファラル採用”と呼ばれるものがあります。
リファラル。
人事・採用担当の方にはずいぶんと浸透している言葉のようです。

簡単に言えば、社員紹介。
既存社員に友人知人を紹介してもらい、採用につなげること。
ちょっと古い言葉を用いれば、『縁故採用』ということになるでしょうか。

この採用手法は、主に中途採用で用いられることが多いようです。
リファラル採用を制度化している会社では、紹介してくれた方が入社に至ったら一時金を出すようにしているところもあります。
転職サイトや人材紹介での採用がなかなか難しい状況が続いている企業からは、
「リファラル採用どう思いますか?」
「社員紹介が上手くいくコツはありますか?」
と聞かれることもしばしばあります。

はじめから制度化しようとするとうまくいかないことも多いので、まずはカジュアルな場を設定することをオススメしています。

カジュアルな場。
食事会とか。
懇親会とか。

昼でも。
夜でも。

お酒があってもなくても。

企業によっては、定期的な懇親会を開いていることが多いと思います。
この懇親会に、ゲストを招く。
ゲストは、既存社員の友人知人。

「知り合い、友人、呼んできてもいいよ」
こう伝えればいいだけです。

とはいえ、そう伝えただけは、なかなか。

各回、テーマがあってもいいかもしれません。
・東京で北陸の海の幸を喰らう
・東京で秋田の幻の酒を飲み比べ
・東京でクラフトビールの飲み比べ
ポイントは大義名分(テーマ)でしょう。

ゲストに呼ばれた本人が、
「××会社の懇親会に呼ばれた」
だと気が引けるでしょう。
でも
「北陸の海の幸を喰らう会に呼ばれた」
だったら。
懇親会目的ではなく、食が目的ですからね。
誘いやすいし、行きやすい。
そんな、カジュアルな場を設定すると良いと思います。

開催当日も、誘ってくれた社員からの簡単な紹介があったら、会をスタート。
目的が“喰らう”ことであれば、社員以外の参加もそれほど違和感はありません。
規模も、社員が4~5名、ゲストが1~2名程度であればそれほど違和感はありません。
そんな、カジュアルな感じで運営するのが良いと思います。

もちろん、カジュアルな場には、トップや幹部も参加して。
純粋に食を楽しむのもいいですが、ゲストと仲良くなる努力が大切ですね。
出身地や、既存社員との関係など、ゲストの人となりを知ることが大切ですね。

このカジュアルな場へのゲスト招待は、既存社員の知人友人だけではありません。
社員紹介というと、中途採用のことだと思われている企業さんも少なくないですが、実は中長期視点での新卒採用にも寄与することが少なくありません。
例えばインターンシップ。
新卒採用の一環として、インターンシップを実施している企業も多いと思います。
3日なり5日なり1週間なり。
インターンが終われば、選考に来てくれることを願い、接点をつなぐ努力をされていると思います。
インターンの参加学生を定期的に招いた食事会や懇親会をするのも妙手です。
インターンに参加した学生同士の再会の場と称しても構いません。
何より、懇親会でおいしい食事にありつけることは、学生にとってこんなメリットはありません。
(普段は客単価2,000円程度の居酒屋で飲んでることが多いですから)
もちろん、学生の友人知人をゲストに招くことを忘れてはいけません。
再会や懇親目的ではなく、食目的であれば来やすいし、誘いやすい。

カジュアルな場を通じて、新たな接点をつくり、つないでいくことが社員紹介の本質だと考えています。

ちなみに、このカジュアルな場。
新たな接点をつくり、つなぐこと以外にさまざまなメリットがあります。

その1。
既存社員の“人となり”を再確認できること。
気のおけない友人知人が参加するとなれば、既存社員もいつも以上に素を出すことになります。
“え? こんな人だったの?”と、会社では見せない一面を垣間見ることもできます。
インターンに来ていた学生もそうです。
インターン期間中の立ち居振る舞いが、普段とはかけ離れた“よそ行き”のものだったことがわかる場合もあります。

その2。
教育の場として利用できること。
僕も少なからず経験がありますが、居酒屋なんかで飲んでいると、“そんな話して大丈夫? 周りに聞こえているんだけど”と隣のテーブルからサラリーマン同士の会話が聞こえてくることがあります。
ひどいグループになると、社章を胸に着けたまま、会社名や業務名、固有名詞をバシバシ話していることもあります。
まったくの見知らぬ他人ではありますが、こっちがヒヤヒヤしてしまいます。
ゲストを招くということは、社外の人が参加しているということ。
となれば、話の内容には気を遣わなくてはなりません。
今進めているプロジェクトの内容、取引先の企業名、そして固有名詞等々。
こうした内容を話さないように気を付けなくてはなりません。
つまり、コンプライアンス教育に活かせるわけです。
既存社員ももちろんですが、インターン生には特に有効です。
大学生には、“コンプライアンス”という意識が希薄です。
(ムリもありません。経験がないのですから)
食事の最中、学生が質問や話題を振るために話してくることがありますが、その場合はやんわりと、“こういう不特定多数の人がいる場では、しないようがいいんだよ”と教えてあげることができます。

社員との交流、懇親の場。
カジュアルな場。
既存社員の意識を高めるためだけに行うのはもったいないと思います。

社員紹介、つまり採用のために活かすこともできますし、社員教育、つまりコンプラ教育のために活かすこともできます。

制度化を検討する前に、まずは、“食”目的のカジュアルな場を設定してみてはいかがでしょうか?

「××を喰らう会、やろうか。××食べに行こう」

そんな一声から始めてみてはいかがでしょうか?

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