新卒向けスカウトメールは“一緒だね”

新卒採用でもダイレクトリクルーティングを導入する企業が増えてきました。
これまでは新卒採用と言えば求人広告媒体。
“××ナビ”と言われるものですね。
求人媒体を用いる採用手法を『応募型』とするなら、ダイレクトリクルーティングと呼ばれる採用手法は『スカウト型』と言ってもいいと思います。

スカウト型を導入する企業が増えてきたと言いましたが、僕の感覚では、
応募型で7~8割
スカウト型で2~3割
というバランスで目標採用数を確保している企業が多いのではないかと思います。

スカウト型のいいところは、こちらから興味ある学生にメッセージを送れることにあります。
いわゆる“欲しい人材は、こちらから採りに行きましょう”というものです。

すでに活用している企業も多いと思いますが、ちょっと気になることがあったので、読者のみなさんに共有させていただきたいと思います。

その会社は、社員が約300名。
オーナーの強力なリーダーシップで急成長している会社。
新卒の採用数は毎年10~15名程度なのですが、そのほとんどをスカウト型で採用しています。

ある時オーナーから、「ちょっとスカウトの文面見てくれませんか?」と。
「改善点があれば指摘して欲しい」という話がありました。

契約する前だったので、カンタンに改善点を伝えました。
結局、契約はしませんでした。
改善点も反映されなかったようです……。

その会社が学生に送っているスカウト文面は、よくできていました。
一般的なスカウト文面としては、ポイントを押さえたいい文面でした。
実は5つほど気になる点があったのですが、1点だけ改善点を伝えました。
僕が指摘したのは、
・学生の経歴に“凄いね”“頑張ったね”“よかったね”というリアクションはしないこと
というもの。
改善点として伝えたのは、
・リアクションには“良いね”“一緒だね”“似てるね”などの言葉を用いること
でした。

僕が指摘したのは、“凄いね”“頑張ったね”“よかったね”という言葉は、『上から目線』だからです。
それに対し、“いいね”“一緒だね”“似てるね”という言葉は『対等目線』なのです。

新卒採用が上手くいっている会社は、学生と対等に向き合おうとします。
学生に支持されている無名のベンチャー、スタートアップほど、学生と対等に向き合おうとします。
面接では、「なぜウチの会社を志望したのですか?」とは決して聞きません。
応募してくれた学生は、ほんのちょっと興味があったから応募しただけで、まだ入社を志望してないことを知っているからです。
説明会でも、自分たちが伝えたい会社概要を伝えるのではなく、学生が知りたい内容を伝えます。
ほんのちょっとの興味から、“働いてみたいかも?”と思ってもらおうとするからです。

採用活動において“学生よりも企業の方が立場が上である”と思っている会社は、どうしても『上から目線』の匂いがします。
「そんなことない、上から目線なんかじゃないよ」
そう言われても、ちょっとした言葉やしぐさにあらわれるものです。
無意識に出てしまいます。
採用活動でなくとも、人は相手のちょっとしたしぐさや言葉から、『上から目線』を感じ取ってしまうものではないでしょうか。

企業から送られてきたメッセージの中に、“それ(経歴に記載の内容)、いいね!”と書いてあったらどう思うでしょう。
同様に、「それ(経歴に記載の内容)、ウチの会社の××さんという社員と一緒ですよ!“と書いてあったら、「それ、ウチの××と一緒です!”と書いてあったらどう思うでしょう。
きっと相手と会社の心理的距離が近づくはず。

応募型と違い、スカウト型では、その会社を始めて知ることも少なくありません。
そもそも学生はメッセージを送ってきた会社を知らないかもしれません。
そんな初対面の相手から、“いいね”“似てるね”“一緒だね”と書かれたメッセージが届いたら。
イヤな気分はしないでしょう。
それ以上に心理的距離が近づくはず。

中には当然、“凄いね”“頑張ったね”“よかったね”というメッセージを嬉しく感じる学生もいます。
そういう学生は、承認欲求の高い学生であることが少なくないようです。
言われたことを言われたとおりにきちんとやり遂げる。
そのやり遂げた結果を、他人から認めてもらいたい、褒めてもらいたい。
そんな承認欲求の高い学生は『上から目線』と感じることも少ないでしょう。
もちろん、こうした学生を採用したい企業もたくさんあると思います。

僕がお付き合いしている会社の多くは、スタートアップ・ベンチャー企業。
こうした会社では、承認欲求よりも自己実現欲求の高い人材が求められます。
故に、僕はスカウト文面の一言一句にも、気を遣いたいな、と思っているわけです。

“いいね”“一緒だね”“似てるね”
こういう考え方もあるんだな、と思っていただければ。

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